大阪市中央区の谷町通沿いに立つ、昭和の香りが残るターネンビルNo.2。繊維・既製服産業で栄えた谷町通界隈には現在タワーマンションが立ち並び、地域の特性は以前から様変わりしています。変化、そしてVUCAの時代にあるこのビルの4階を全面的にリノベーションし、その後ビル全体を段階的に生まれ変わらせていくためのロードマップの軸となる、ビル全体および4階フロアのコンセプト設計をo-lab inc.が手がけました。
創業以来、谷町で様々な先駆的取り組みをしてきたという歴史・能動的なマインドセットこそがビルを所有する浪速産業にとって誇るべきDNAではないかと感じたo-labは、少子高齢化や空き家問題等、課題で満ちた社会であっても朗らかに切り拓いていくという思いも込め、「〇〇年後にあってほしい谷町を 実験的に楽しく先取りする」という方向性を提案しました。さらに端的で心に残る表現を模索する中でヒントになったのが、ビルの名称「ターネン」。浪速産業創業者・中野種蔵氏の名前に由来するターネンを「種」と解釈し、「いろいろな実を結ぶ、種ビル」というビルのグランドコンセプトが生まれました。
セットアップオフィスフロアとなる4階のコンセプト創出は、リノベーションを手がけるウエダ本社によるバイオフィリック、木質空間、アート等の空間要素、そして「あいまいな境界線」「信頼資本・関係資本」というキーワードを包括する「ええモン、ええコト、ええヒトが出入り・循環する」という概念を出発点としました。循環を呼吸として捉えると、人の呼吸が「スーハー(吸う、吐く)」であれば様々な価値が出入りする種ビルの呼吸は「クーハー(来る、発する)」ではないか、との着想から、4階の名称およびコンセプトは「Kuu Haa:種ビルの、価値が循環する呼吸法」となりました。
古ビルらしい趣のあるエレベーターの扉が開いた瞬間に目にするKuu Haaの立体的なロゴは、無数の矢印で構成されています。二つとして同じ寸法、向きの矢印はなく、動的で多様性溢れる価値の出入りを表現しています。
浪速産業, ウエダ本社|Naniwa Sangyo, Uedahonsha
2022