Farmarium

九州大学とCarbon Xtract社が開発した大気中のCO₂回収技術、スパイスキューブ社の植物工場技術、JR西日本の鉄道駅という社会インフラを掛け合わせることで未来の都市型農業装置を開発する2025年大阪‧関西万博関連プロジェクトにおいて、コンセプト設計および装置のデザインをo-lab inc.が手がけました。

Vertical Farming(垂直農法)が少しずつ社会に広がり、その中でインテリア性の高い栽培装置も見かけるようになりました。ただ、どこか人間中心の考え方が色濃く、白黒の筐体の中で直線的に配列された、まるで生命維持装置に繋がれたような野菜たちはあまり幸せには見えない…というo-labの視点から、野菜たちが野菜らしく、生き生きと楽しそうに、という全く新しい装置コンセプトが導き出されました。しかしながら、超薄膜により大気中から集められたCO₂を光合成に活用するという核心的かつ独創的なアプローチ・技術をショーケースしつつ、一方で野菜が元
気に成長できる庫内環境を構築し、さらにその姿を行き交う人々が前後左右から楽しめる独立した装置の開発という世界で初めての試みの中では、複合的な無数の課題に直面しました。それでも、デザイナーとエンジニアがギリギリのせめぎ合いを繰り返すことで、水族館用アクリル水槽の製造技術を応用した外壁の中にアクリル二重筒が胃袋のように貫通した、類を見ない栽培装置が完成し、万博会期中にJR弁天町駅構内において展示されています。

人工的で機械的な印象を与えがちな液肥の配管等は徹底的に遮蔽されたデザインとし、今にも楽しげに回転しそうな印象の円形の植物棚の上で野菜は育ちます。また、中央部支柱部に強度を担保することで透明なアクリルのみの外壁を実現し、極めて高い開放感を実現しました。「宙に浮いた光るドット」によるモーショングラフィックスは装置のメカニズムを表現するだけでなく、観覧体験をさらに楽しく興味深いものにしています。観覧者たちからは「楽しい」という、従来の水耕栽培装置への主な賛辞「おしゃれ」とは異なる質のコメントを多数頂いています。

大気からのCO₂回収(DAC: Direct Air Capture)分野において主流を占める大規模施設ではなく、DAC型農業装置として圧倒的にコンパクトなFarmariumはCO₂の地産地消に寄与し、野菜たちの成長を人々が毎日の通学や通勤、お出かけの際に、いつもの駅で気軽に楽しむことができる、地域社会に提供する新しいCO₂循環モデルです。本実証実験機を多くの人々に体験して頂くことで課題を抽出し、さらに進化したFarmarium 2.0以降へと繋がることを期待しています。


Farmarium is an innovative urban vertical farm that uses m-DAC, a direct air capture technology developed by Kyushu University and Carbon Xtract, to support plant growth. As the world’s first initiative enabling compact, decentralized CO₂ capture and use in ubiquitous urban areas like train stations, Farmarium is a new local CO₂ cycle that also creates a pleasant and engaging experience for all.

Client

Carbon Xtract株式会社 / 西日本旅客鉄道株式会社 / スパイスキューブ株式会社

Year

2025

Category
Lifestyle, Logo design, Sustainability, Technology
Tags
concept making, graphic design, product design, product naming