OMNITO

インクジェット式錠剤印刷機のデザイン

 

 

今日の私たちの暮らしは、さまざまな医薬品の存在無くしては成り立たないでしょう。一方、高度化・複雑化す医薬品の処方が人それぞれに異なることから、調剤ミスの防止は極めて重要な課題であり、錠剤への正確な印刷は有効な対策の一つです。

 

SCREENの新しいインクジェット式錠剤印刷機は、機構部のコンパクト化、ブロア・集塵機を内蔵させる再設計により、前号機に比べ大幅な省スペース化を可能にする革新的な機器。1時間あたり20万錠という高速印刷を実現しつつ、印刷精度の自動検査や最小50µmの割れ・欠け・黒点の自動検出・除去など、最先端の技術が詰まっています。

 

しかし、従来の錠剤印刷機は「窓の付いた板金の箱」という印象のものばかりでした。日常的に使用するライフスタイル機器の洗練されたデザインで目の肥えたユーザーに、先端的で信頼感のある印象と卓越したユーザービリティを提供することがデザインプロジェクトのミッションでした。

 

現場でのリサーチから、操作ディスプレイの存在が清掃やメンテナンスの支障になることが多いという課題をを抽出。そこで振り子式に回転するディスプレイユニットを考案し、機器稼働時には機器前面に配置され、ドアの開閉時にのみ上方に回避させることが可能な仕様を実現させました。結果、観音開き仕様の大型ドアデザインにより、内部へのアクセスは大幅に改善されました。

 

ステンレスという、当分野での作法とも言える清掃性の高い素材を踏襲しながらも、精度高く実現したコーナー部Rや巧みに取り入れられた黒のマスキングによる開放感などにより、単純な箱という印象から脱皮した外観。面発光する視認性の高いインジケーターの大胆さと、工芸クオリティのブラスト処理や各部グラフィックス等のディティールがバランス良く共存した、機能もデザインも最先端の錠剤印刷機が完成しました。

 

機器はOMNITOと名付けました。一台に多機能を有する全能性(OMNI)。そして600dpiという高画質フルカラー印刷の綿密さと色彩が、SCREEN社が拠点を構える京都で活躍した日本画家・伊藤若冲(ITO)を思い起こさせます。

Client

SCREEN

Year

2019

Category
Technology
Tags
logo design, product design, product naming