環境に配慮した「FORMED FIBER TECHNOLOGY(パルプ成形技術)」を展開するNISSHAが手がける「パルプフォーミング(PF:Pulp Foaming)」は、金型の中で水・デンプン・パルプの混合物を射出、発泡成形させることで⾼い緩衝性と造形性を可能にする革新的でサステナブルな素材技術です。o-lab inc.のミッションは、この素材技術の特徴やポテンシャルを端的に表現し、その魅力伝達の媒体となるプロトタイプをデザインすることでした。
PFは海外でパッケージとしての使用実績があるものの、板状のパルプを圧縮成形した従来のパルプモールドとの差異が明白な形で使用されている例はほぼ皆無でした。樹脂の射出成形のように造形可能な構造用のリブは見えない位置に隠されてしまう使い方ばかりで、あくまで樹脂やパルプモールドの代替品という印象を超えられない原因の一つとなっていました。o-lab inc.は緩衝性を有するリブ、という特徴を「見せて良い」デザイン要素に昇華させることでPFならではのポンテシャルが生かされると考え、放射状に並んだリブがガラス製品のクッションとなる、果実を割ったような断面の印象を特徴とするデザインを考案しました。さらに、通常は身と蓋それぞれ2パーツずつ、計4パーツで構成される同類のパッケージですが、身と蓋それぞれ1パーツずつ、計2パーツ構成への大幅な削減も可能にします。
PF製法における従来のエンジニアリング的限界点を押し上げるべく試行錯誤を重ねた末、ガラスカップを入れての落下試験にも耐える緩衝性を有する新しいパッケージアプローチが誕生しました。微小な造形要素の連続によるテクスチャーやロゴの立体的な刻印もPFならではの精度で再現され、一方、ミクロな凹凸を特徴とする肌質は天然素材の工芸品にも通ずる不思議な雰囲気を纏わせます。その軽さや質感から和菓子「最中(もなか)」が連想される、視覚・触覚共に強く印象に残るプロトタイプは、PFという素材技術の伝え手として活躍してくれるはずです。
NISSHA
2021